マウス皮膚二段階発癌実験におけるモロニック(AF-08プロポリス)の予防効果

2012年 環境放射能除染学会

  • 日本大学薬学部
    安川 憲,劉 素延
  • (有)アマゾンフード  堤 重敏
  • 九州保険福祉大学 薬学部 薬学科 黒川昌彦
  • カンピーナス大学 Young, K, Park

発表要旨

我々は,天然物を利用した癌予防の研究を進めている.野菜類,食用キノコ,スパイス,ハーブ・サプリメント,生薬類から活性成分を単離し1),その化学構造を決定し一部のものについては構造活性相関を明らかとしてきた2,3)

一次スクリーニングとして,発癌プロモーター12-O-tetradecanoylphorbol-13-acetate (TPA)が誘発する炎症に対する抑制効果を指標とした.10種のブラジル産プロポリスについて本アッセイを行い,全てのプロポリスが抑制効果を示した.特に強い抑制効果を示したモロニック(以下:AF-08)については,発癌物質7,12-dimethylbenz[a]antracene (DMBA)をイニシエーター,TPAをプロモーターとして用いるマウス皮膚二段階発癌実験における効果を検討した.また,AF-08の主成分の1つである5環性トリテルペン誘導体moronic acidについても,TPAが誘発する炎症に対する抑制効果とマウス皮膚二段階発癌実験に対する抑制効果を検討した.

Moronic aci 構造基源植物が異なるブラジル産プロポリスは,効果に差は有るが全てのものが抑制効果を示した.更にAF-08は,Fig. 1.に示す如くマウスの腫瘍の発現を抑制した.発癌対照群では,5週目に最初の腫瘍が出現し12週では全てのマウスに腫瘍が発現したが,AF-08投与群では7週目に出現し,20週では27%のマウスに発現した.平均腫瘍数では,対照群の14.5個に対し,AF-08投与群では1.8個と88%の抑制効果が見られた.AF-08の主成分の1つであるmoronic acidは,TPAが誘発する炎症に対し非ステロイド系抗炎症薬であるindomethacinより強い効果を示した.Moronic acidも同様に,マウス皮膚二段階発癌実験におけるプロモーション過程を抑制することを確認した.これらの結果は,AF-08が癌を予防する可能性があることを示唆している.

1)     Yasukawa K, Medicinal and edible plants as cancer preventive agents. In: Drug discovery research in pharmacognosy, Vallisuta O, Olimat SM (eds), pp. 181‒208, 2012, InTech, Croatia.

2)     Yasukawa K, Cancer chemopreventive agents: Natural pentacyclic triterpenoids. In: Pentacyclic triterpenes as promising agents in cancer, Salvador JAR (ed), pp. 127‒157, 2010, Nova Science Publishers, Inc., New York.

3)     Akihisa T, Yasukawa K, Antitumor-promoting and anti-inflammatory activities of triterpenoids and sterols from plants and fungi. In: Studies of Natural Product Chemistry, Volume 25. Bioactive Natural Products. Part F, Atta-ur-Rahman (ed), pp. 43–87, 2001, Elsevier, Amsterdam.