ブラジル産プロポリスの癌予防に関する研究
2011年 日本予防学会
- 日本大学薬学部
安川 憲, 野伏康仁, 劉 素延, 及川直毅 - (有)アマゾンフード 堤 重敏
- 九州保健福祉大学薬学部 黒川昌彦/li>
- University of Campinas Yong K. Park/li>
【目的】
癌予防は,健康増進において解決しなければならない最重要課題の一つである。紀元前
から人類が利用している薬の一つにプロポリスがある。これは,ミツバチが巣を守るために,近くに生えている植物の新芽,若葉,樹液,樹脂などを集め,巣の出入り口などに貼り付ける物質である。巣の有る環境により,集めてくる植物の種類が異なり多種多様である。今回,良質であるといわれているブラジル産に着目し,マウス皮膚二段階発癌実験を行い,そのプロモーション過程に対する効果を検討した。
【方法】
各種ブラジル産プロポリスを含水アルコールで抽出し,試料を調整した。動物実験では,7週齢のICR系雌マウスを用いた。炎症実験では,1μgのTPAアセトン溶液を右耳殻に塗布し炎症を誘発した。試料はTPA塗布の30分前に同一部位に塗布した。最大腫脹時のTPA塗布6時間後の耳殻の腫脹を測定し,抑制率を算出した。発癌実験では,マウスの背部の毛を刈り,50μgのDMBAアセトン溶液を塗布しイニシエー卜し,その1遇後から1μgのTPAアセトン溶液の塗布を週2回,20週間行いプロモートした。試料は,TPA塗布の30分前に同一部位に塗布した。強い抑制効果を示したプロポリスについて,各種クロマトを用い活性成分を単離した。
【結果】
10種のブラジル産プロポリスは,TPAの誘発する炎症を抑制した。最も強い抑制効果を
有したプロポリスは,DMBA-TPAによるマウス皮膚二段階発癌を抑制した。各種クロマトグラフィーにより単離した化合物は,各種機器分析スペクトルの解析により,moronic acid(1),betulonic acid(2),anwuweuzonic acid(3)と同定した。Moronic acid(1)は,マウス皮膚二段階発癌実験により,プロモーション過程を抑制することが確認された。
【結論】
TPAが誘発する炎症に対する抑制効果では,蜂が採集してくる植物により抑制効果に差
が見られた。強い抑制効果を示したプロポリスAF-08は,マウス皮膚二段階発癌のプロモーション過程を抑制した。更に、このプロポリスAF-08から,moronic acid(1)などのトリテルペン誘導体を単離同定した。これらの含有成分は,TPAが誘発する炎症を抑制した。特に、主成分のmoronic acid(1)は,同発癌実験において,プロモーション過程を抑制した。