インフルエンザウイルス感染に対するプロポリスの病態改善効果

2005年 日本ウイルス学会

  • 九州保険福祉大学 薬学部
    清水寛美,渡辺 渡,黒川昌彦
  • 富山医薬大医    白木公康
  • アマゾンフード   堤 重敏

 【目的と意義】

我々は,これまでに新しいウイルス病治療薬の検索を目的として,伝統医薬物や天然物からウイルス病治療に有効な成分を見いだし,その作用機序について検討してきた(J. Phamacol. Exp. Ther., 297, 372−379,2001; Antiviral Res., 56, 183−188, 2002; Eur. J. Pharm., 474,283−293, 2003)。これら研究の一環として,種々の生物活性が知られていることから食品サプリメントとして使用されているプロポリスに着目し,インフルエンザウイルス(IFV)感染症に対する有効性をin vitroおよびin vivoで検討した。

【材料と方法】

20種頬のプロポリスを用いて,各々のプロポリスエタノール抽出物の抗IFV活性をプラック減少法により検討した。DBA/2マウス(6遇令,雌)にIFV(PR8株,1000PFU/マウス)を鼻腔内接種し,プロポリスエタノール抽出物(0.4, 2, 10mg/kg)を1日3回,7日間経口投与した。感染後,体重変化および延命作用を観察した。また,肺胞洗浄液(BALF)中のウイルス量についても感染非投与群と比較検討した。

【結果】

プラック減少法の結果,20種類のプロポリスのうち4種顆に抗IFV活性が認められた。さらに,これら4種類のうち1種類のプロポリスについては,2および10mg/kgの用量においてIFV感染マウスの生存日数を延長した。しかし,0.4mg/kgの用量ではこの作用は認められなかった。また,プロポリス10mg/kg投与マウスにおけるBALF中のウイルス量は,感染4日目で感染非投与群と比較し有意に減少した。プロポリス投与による体重減少は認められなかった。

【考察】

20種類のプロポリスのうち,invitroで抗IFV作用を示した4種類中の1種類にinvivoでもIFV感染に対する病態改善効果が認められ,プロポリスにはウイルス病治療に有効な成分が含まれていることが示唆された。現在,プロポリスのIFV感染マウスの免疫系への影響についても検討しており,あわせて報告する。