プロポリスの抗インフルエンザウイルス作用

2006年 日本ウイルス学会

  • 九州保険福祉大学 薬学部 薬学科
    清水寛美, 渡辺 渡, 黒川昌彦
  • (有)アマゾンフード  堤 淳子,  堤 重敏

【目的と意義】

これまでに、プロポリスが in vitro および in vivo において抗インフルエンザウイルス作用を有することを明らかにした。この抗ウイルス作用(延命作用)には用量依存性が認められ、感染マウス肺胞洗浄液(BALF)中のウイルス量は、プロポリス非投与群と比較して有意に減少した(第53回ウイルス学会抄録)。そこで今回、この in vivo での作用の有効性を評価するために、プロポリスの抗ウイルス作用をオセルタミビルと比較検討した。また、抗ウイルス作用機序解明の一環としてプロポリスによるウイルス吸着阻害作用を検討した。

【材料と方法】

プロポリスはエタノール抽出物、インフルエンデウイルスはPR8株(H1N1)を用いた。
感染動物実験:DBA/2マウス(雌,6週齢)にウイルス(1600PFU/マウス)を経鼻接種し、プロポリス(10mg/kg,1日3回)あるいはオセルタミビル(0.1,1mg/kg,1日2回)を7日間経口投与した。
ウイルス吸着阻害実験:種々の濃度のプロポリス存在下におけるウイルス吸着、あるいはウイルス吸着後のプロポリス処理による各々の抗ウイルス作用をMDCK細胞を用いたプラック減少法で検討した。

【結果】

  1. 非投与群と比較してプロポリス投与による有意な感染マウス体重減少の抑制効果は、オセルタミビル(1mg/kg)投与群の作用とほぼ同等であった。
  2. プロゴリス投与によるBALF中ウイルス量の減少は、オセルタミビル(1mg/kg)投与群と比較して有意差はなかった。
  3. ウイルス吸着後のプロポリス添加は抗ウイルス活性が濃度依存的に見られたのに対し、ウイルス吸着時のみの添加では抗ウイルス活性は認められなかった。

【考察】

プロポリス10mg/kgの抗インフルエンザウイルス作用は、オセルタミビル1mg/kgの作用に相当し(各用量はマウスにおけるヒトでの投与量に相当)、プロポリスがインフルエンザ感染症に対して有効な治療効果を有することが評価された。また、この抗ウイルス作用は、ウイルスの細胞への吸着段階を阻害するのではなく、ウイルスの複製過程に影響していると推察された。現在、オセルタミビル耐性ウイルスヘのプロポリスの抗ウイルス作用についても検討しているのであわせて報告したい。