プロポリス含有フラボノイド類の抗インフルエンザウイルス作用

 

2012年 第60回日本ウイルス学会学術集会

  • 九州保険福祉大学 薬学部 薬学科
    坂本 秀一, 外山 聡美, 林 佑哉, 本田 詩織, 松岡 さゆり, 吉田 裕樹, 渡辺 渡, 黒川 昌彦
  • 日本大学 薬学部 安川 憲
  • (株)アマゾンフード 堤 重敏

【目的】

我々は、伝統医薬物やサプリメントの抗ウイルス作用について検討し、ウイルス感染症に有効な物質の探索を行っている。これまでに、インフルエンザウイルス感染症に対する有用なブラジル産プロポリスAF-08を見出した(Antivir. Chem. Chemother., 19, 7-14, 2008)。これは、A型ウイルスの他、B型、A型H1N1オセルタミビル耐性株に対してin vitroで抗ウイルス作用を示した。今回、 AF-08に含まれる抗インフルエンザウイルス物質を検索する一環として、AF-08に主に含まれているフラボノイド類の抗インフルエンザウイルス活性をin vitroとin vivoで検討した。

【材料と方法】

11種類のフラボノイド類化合物を用いて、MDCK細胞を用いたプラーク減少法により抗インフルエンザウイルス活性を検討した。インフルエンザウイルスは, A/PR/8/34 (H1N1),  A/富山/129/2011(H1N1)pdm09(オセルタミビル、ペラミビル感受性株、275H), A/富山/26/2011(H1N1)pdm09(オセルタミビル、ペラミビル耐性株、275Y)を用いた。また、MTT法を用いて、MDCK細胞に対するフラボノイド類化合物の細胞毒性を検討した。BALB/cマウス(6週令, 雌)にPR8株 (1000 PFU/マウス)を鼻腔内接種し、フラボノイド類化合物(30 mg/kg)を1日2回、7日間経口投与した。感染後、体重変化および延命作用を観察した。

【結果および考察】

プラーク減少法の結果、11種類のフラボノイド類化合物のうち4種類に抗インフルエンザウイルス活性が認められた。この4種のうち3種(ケンフェロール、アピゲニンとクマリン酸)は、用いたPR8株、新型H1N1株と新型H1N1耐性株に対し有効であった。また、これら 3種類のうちケンフェロールは、PR8株経鼻感染マウスの生存日数を有意に延長した。したがって、11種類のフラボノイド類化合物のうち、ケンフェロールだけがマウスにおけるインフルエンザ病態改善に有効であったので、ケンフェロールは、抗インフルエンザ作用を示すプロポリスAF-08の有効成分の一つであると考えられた。現在、ケンフェロールのin vivoにおける抗インフルエンザウイルス活性を詳細に検討している。(新型H1N1株は、富山県衛生研究所、ウイルス部、小渕正次先生から供与していただいた。)