プロポリスによる臭素化難燃物曝露マウスのRSウイルス感染病態重症化の改善効果

2012年 和漢医薬学会

  • 黒川昌彦(くろかわまさひこ)1,竹下寛美12,渡辺渡1,堤重敏3,吉田裕樹1,安川憲4
  • 1 九州保健福祉大学薬学部生化学講座
    2 中央薬局(福岡)
    3 (株)アマゾンフード
    4 日本大学薬学部

【目的】

我々は,環境化学物質の発達期におけるリスク評価の一環として新生児や乳幼児での罹患率が高い respiratory syncytial ウイルス(RSV)感染症に着目し,マウスRSV感染モデルを用いて,環境化学物質の新たな毒性評価系を構築し,臭素化難燃物質(BFR)に周産期曝露した仔マウスではRSVの感染病態が重症化することを明らかにした(Environ. Toxicol. Pharmacol., 25,69−74:26,315,8211;319,2008)。また,抗炎症作用や抗癌作用など広範な生理活性を有するプロポリスが,インフルエンザウイルスや単純ヘルペスウイルス感染症に有効であることを明らかにした(Antivir. Chem. Chemother.,19,7−14,2008:Evid. Based. Complement. Alternat. Med.,2011;2011:9761969. そこで本研究では,BFRによるRSV感染症の重症化に対するプロポリスの効果を検討した。

【方法】

BALB/cマウス(雌,4週齢)を,1%テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)を含む粉末餌,あるいは,
1% TBBPAと0.02%プロポリス(AF−08)を含む粉末餌で28日間飼育した後,RSV(A2株,3Ⅹ105pFU)を経鼻感染し,通常食で飼育した。感染後,経日的に取得した肺洗浄液(BALF)中のウイルス量をプラーク法で,また,IFN−γレベルをELISAで測定した。さらに,感染5日後に摘出肺の病理標本を作製した。

【結果・考察】

1)TBBPA単独投与群では,非投与群に比べて肺中ウイルス量と肺炎の指標であるBALF中のIFN−γ量が有意に上昇した。しかし,AF−08との併用投与により肺中ウイルス量は有意に減少し,IFN−γ量も減少傾向を示した。2)invitroでTBBPAとAF−08には抗RSV活性が認められなかった。以上の結果,AF−08は,BFRによるRSV肺炎重症化を改善した。このように,健康増進を目的としたサプリメントとして使用されているプロポリスが。今後,化学物質によるリスクを軽減するための新たな有用物質である可能性が高まった。