単純ヘルペスウイルス1型感染に対するプロポリスの病態改善効果の解析

2010年 日本ウイルス学会

  • 九州保健福祉大学薬学部
    吉田裕樹, 甲斐久博, 渡辺渡, 松野康二, 黒川昌彦
  • (有)アマゾンフード  堤 淳子,  堤 重敏
  • 日本大学薬学部 吉田裕樹, 安川憲
  • 富山大学医学部ウイルス学教室 吉田裕樹, 白木公康

【目的と意義】

我々は、これまでに、マウス経鼻感染系を用いて、ブラジル産プロポリス(AF-08)のインフルエンザウイルス感染に対する有効性を明らかにした。一方、マウスの単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)経皮感染系を用いて、15種のプロポリスからHSV-1感染に有効な4種(AF-05,06,07.08)を選択している。そこで、これら4種のHSV-1感染症に対する有効性をin vitroとin vivoで検討した。

【材料と方法】

HSV-1 7401H株を経皮感染したマウスに、15種類のプロポリス(10mg/kg)を経口投与(1日/3回/6日間)し、皮膚病変の進展度、延命効果を、また、感染5日目に虔膚、脳のウイルス量を検討した。一方、感染4日日に、プロポリス投与マウスのbotpadにUV不括化HSV-1抗原を接種し、経時的にその腫脹を計測して遅延型過敏反応を評価した。この時、プロポリス投与感染マウスから調整した脾細胞を用いてHSV-1抗原刺激によるIFN-γ産生を検討した。また、プロポリス非投与感染マウスから調整した脾細胞を用いて、種々の濃度のプロポリス存在下で抗原刺激によるIFN-γ産生を検討した。4種のプロポリスの成分パターンをHPLCで解析した。
プラーク減少法を用いて抗HSV-1活性を検討した。

【結果および考察】

  1. 4種のプロポリスは皮膚病変の進展を有意に遅延した。
  2. AF-05と07のHPLC成分パターンは極めて類似していたので、以下、AF-06,07,08に着目した。
  3. AF-07と08投与は、皮膚あるいは脳でのウイルス量を有意に減少した。
  4. AF-08だけにin vitro での抗HSV-1活性が認められなかった。
  5. AF-06と08投与は遅延型過敏反応を増強した。
  6. この時、AF-08投与群の脾細胞では、HSV-1抗原刺激によるIFN-γ産生が有意に増加した。
  7. 一方、非投与感染マウス脾細胞では、AF-06存在下でHSV-1抗原刺激によるIFN-γ産生が有意に増加した。

以上の結果、AF-07は主に直接的な抗HSV-1活性により、また、AF-06では成分物質そのものが、AF-08では成分物質の代謝物が、それぞれHSV-1軽皮感染に対する主な免疫防護反応である遅延型過敏反応を亢進した結果、これらのプロポリスで治療効果が得られたと考えられた。